6号機の規制の代表格である「有利区間」ですが、2021年12月に新たな解釈の緩和が発表されました。
これでスロットがどう変わっていくのか?すでに多くの方が意見を出されていますが、僕も少し考えてみました。
変更の概要
まず変更点を確認しておくと、
「有利区間の終了条件をMY2400枚から差枚数2400枚とする」
ということです。
MYとか差枚数ってなんのこっちゃというところですが、基本的には
MY → 一番凹んだところを起点とした獲得枚数。つまりAT突入してグラフが上向いたところから2400枚まで出せる
差枚数 → 有利区間開始を起点に、そこからプラス2400枚まで出せる
となります。イメージで見るとこんな感じです。
緩和前
最深部(AT突入時点)からの2400枚となるため、ATを当てるまでに投資1000枚かかった場合、2400枚完走しても差枚数は+1400枚にしかならない。
緩和後
有利区間開始時点を0とするので、AT突入までにかかった投資が1000枚なら、1000枚+2400枚で最大3400枚出せる!
ということですね。
「じゃあ、AT突入までに7600枚吸い込んだ台なら、一撃万枚も可能じゃん!」
と思われるかもしれませんが、別の規則との兼ね合いもあるのでそれは無理そうです。これについては後述します。
ではこの緩和でスロットがどう変化するのか、考えてみました。
吸い込み差枚数をフル活用する
今回の緩和はあくまで同一有利区間に限られるので、有利区間がリセットされたら差枚数はまたゼロに戻ります。
例えば、1000枚吸い込んでAT単発100枚、つまり差枚数がマイナス900枚の状態でATが終わって、さらに有利区間もリセットされたとしましょう。
この場合、マイナス900枚の差枚を持った有利区間はすでに無効になっているので、次の有利区間が始まって1G目にAT突入しても最大で2400枚までしか出せません。
ですが、もし有利区間を引き継いでATも引き戻したとしましょう。この時点ではマイナス差枚は900枚で、しかも同一有利区間なのでこの引き戻し後のATは3300枚まで出せることになります。
あとはCZタイプの台もそうですね。CZスルーするたびに有利区間をリセットするのは損で、吸い込み枚数を最大限活かせるギリギリまで有利区間を引き継ぐような動きをすることが、「爆発力のある台を出す」という命題に対して正解となります。
天井に近づくほど期待値アップ
吸い込めば吸い込むほどATの期待枚数がアップするなんていかにも裏モノっぽいですが、上述したように、メーカーにとってはやっと掴んだ爆発力を見せつめるチャンスなので、ハイエナだの不公平感だのは横に置いて、一撃の出玉性能に寄せた機械をこぞって作ってくるのではないかと思います。
吸い込んだ枚数を必ずしも吐き出すとは限りませんが、吸い込み枚数がある時にしか2400枚リミットを突破できません。そうなれば、「ハマればハマるほど貯まる裏ストック」とか「最深部までハマった時のみ突入する特化ゾーン」みたいな形でハマリの代償に爆発力を持たせる機械も増え、ますますハイエナが喜ぶでしょう。
ハイエナされないためには自分が突っ込んだ分は自分で回収する必要があり、そうなるとヤメたくてもヤメられないという、5号機とは違った歪な形で射幸性というかのめり込みを助長してしまうかもしれません。
メーカーとしては有利区間の切り替わりをわかりづらくしたり、ブツ切りにするという対応はあるかもしれませんが、名誉挽回を成し遂げたいメーカーは、多少バレバレになったとしても射幸性の高さを選ぶことでしょう。
打ち手としては、機械がどうなろうとも、その仕組みを正しく理解して自分なりに立ち回るだけですが、6.0号機の高ベースに慣れたあとに低ベース機で当たるまで突っ込まざるを得ないというのは、ぬるま湯から一気に冷水に飛び込むような感覚でしょうね。ちょっと怖いようでもありますが、5号機の旧基準機の時代に戻ると思えばいいのかもしれませんね。それに怖いのは自分だけではないので、これまでの6号機に慣れていた打ち手は資金が持たなかったり怖くなってハイエナチャンスは増えるかもしれません。
とはいえ、有利区間3000Gというのは現状では緩和されていないので、GODみたいなタイミング不問で美味しいフラグは作りにくいでしょうね。そう考えると、有利区間の差枚数や残りゲーム数によって出現確率が変動する「擬似遊技」でGOD揃いを見せるなんて日がくるかもしれませんね。
ただし短期出玉・中期出玉率がネックに
これでスロットも復活だぜ!と喜ぶ声もあるでしょうし、もちろん今よりも爆発力が上がり、ギャンブル性を求めるほとんどのユーザーにとっては好ましい変化といえるでしょう。
しかし、冒頭で書いたような「7600枚吸い込んでからの一撃万枚」みたいな青天井の性能アップは不可能でしょう。
なぜなら、保通協の型式試験でチェックされる「短期出玉率」と「中期出玉率」がスロッターの夢の前に立ちはだかるからです。
短期出玉率とは400Gで出玉率が220%を超えないこと、中期出玉率は1600Gで出玉率が150%を超えないこと、となっています。
これをATでいうなら、400Gで1440枚、1600Gでは2400枚までしか出してはいけないということになります。
この出玉率の制限は「風適法」という法律で定められているそうで、出玉率の上限を緩和するのは絶望的に難しいと思います。
今回の緩和は業界団体の「自主規制の解釈変更」だそうです。法律ですらない自主規制の解釈を変えるだけでも警察の了承を得たりと大変だったらしいのに、国会での法改正となれば、依存症・のめり込み対策がしっかりと進んでいて、パチンコスロットは健全な遊技であり、業界の衰退が社会全体にとって望ましくないことを明快に示す必要があるでしょう。
過去に風営法だの風適法が射幸性を高める方向に「改正」されたことが一度でもあったのかは分かりませんが、出玉性能面での規制は4号機時代から締まる一方だったと理解しています。
実射試験で下ブレろ!
「いやいや、そんなキツいルール無理でしょ! っていうかリゼロは純増8枚で300Gで2400枚出たし、北斗天昇だって純増6枚で400Gで2400枚じゃん、この2機種だけで400G1440枚なんてとっくにオーバーしてるし、他の機種だって早めの当たりからATが伸びれば1600Gで2400枚は余裕で出るでしょ?」
という疑問が出るわけですが、たしかにそうですよね。
これが可能になるのは時代遅れの「ぶっつけ本番」の実射試験によるものだそうです。
保通協の試験では、試験官が実際に打ってみて出玉の推移等を記録して試験するそうなので、試験の時に爆発さえしなければいいそうです。
今の時代ならば、台の仕様とプログラムのコード、理論値、そしてそれに基づいた出玉推移のシミュレート結果を提出させた方がよりいい気もしますが、実機を実際に打つというのは、遊技機の不正改造がないかとか、そういう物理的な部分のチェックもあるのかもしれません。もしかしたら実射試験とは別に理論値やシミュレーション結果もチェックされているのかもしれませんが、僕には内情は分かりません・・・
ただ、ぶっつけ本番で得られるサンプルなんてごく僅かなので、マイルドな台でも運悪く試験中にフリーズを引いて完走されたら落ちるし、逆に試験中にハマってくれれば尖ったスペックでも試験を通りかねないということです(実際には長期出玉試験もあり、そう簡単ではないようですが)。
実際にジャグラーなどはノーマルタイプの中でも限界スペックを攻めるため、試験に落ちる前提で同じ機械を何十回も持ち込むそうです。そこでたまたま下ブレしたら試験をパスしてそれが世に送り出されるようです。ジャグラーの型番の後ろにはKD、KT、KKみたいな意味不明なアルファベットがついていますが、あれは同じ機械を型番の最後だけを変えて何度も試験に持ち込んだ痕跡かもしれませんね。
実射試験はもちろんタダではなく、一度の申請に100万円を超えるお金がかかるようですが、社運をかけた機械ならば、そこで使う数千万円も必要経費と割り切れるのでしょう。ジャグラーなら出せば完売確定なので、逆に万が一にもブランド価値を落とすことがないように、それこそ納得がいくスペックを先に決めて、あとは試験に通るまでひたすら申請するのでしょう・・・・
話がそれましたが、今回の緩和後によっぽど尖ったスペックの台を出したければ、「理論上はダメだが、運がよければ実射試験をパスできるギリギリのスペック」で何度も試験を落ち、その末で生まれてくることに期待するしかないようです。
現実問題として、深くハマってからのATが高頻度でロング継続して2400枚以上吐き出すようだと中期出玉率に引っかかってしまう気がするので、そのような夢を持たせるにしても、かなり低頻度でしか起こらない気もします。ただこれまでは規制と緩和、そして規制があってもメーカーは活路を見つけてきた歴史もあるので、今回の緩和で来年以降どんな機械が出てくるのか、各メーカーの活躍に期待したいところですね。