設定推測ツールを使っている方は多いと思いますが、設定推測ツールがどのようにして推測結果を求めているかを知らない人が多いと思います。
もちろんそんな計算を知らずに使ってもなんの問題もありません。むしろ、しち面倒な計算を代わりにやってくれるのがツールの役割ですから。
とはいえ、設定推測ツールの結果を押し引きの判断材料として使う以上、その仕組みを知らずに使っているのは少しもったいないなと思い、今回は設定推測ツールの仕組みについて書いてみようと思います。
難しいそうな感じがするかもしれませんが、やっていることは単純なかけ算くらいのものです。
興味がありましたら、ぜひじっくりと読み進めていただければと思います。
基本的な考え方
スロットの設定推測は、二項分布の確率質量関数を各設定ごとに求め、それらを比重化することで各設定の期待度を示す。
なんて書かれたら意味不明ですよね。
ネットで二項分布という内容を検索してみると、訳のわからない説明と数式がズラズラと出てきます。
数学って、マゾの学問だと思います。理解できればそんなに難しくないことでも、わざと学習者を脱落させるかのような意味不明な説明をしたがるんですよね。ライオンのお母さんが我が子を谷から落とし、這い上がってきた子どもだけを育てるというアレかと思っちゃいますよ。
僕はホントこういうの苦手なんです。
でも大丈夫です。書いている僕も理解できていませんし、用語の使い方が正しいのかどうかさえ自信がありませんから。
設定推測に関していえば、発想自体はとても単純なんです。
ここでは話をさらに単純化するために、ボーナスが一つのみ、、設定もHIGHとLOWの2つしかない架空のスロット台を想定して話を進めましょう。
パチスロサイッチーAマイナスのスペック
設定 | ボーナス確率 |
LOW | 1/4 (25%) |
HIGH | 1/2.5 (40%) |
もちろんこんなスペックの台は存在しませんが、説明をしやすくするために極端にシンプルなスペックをでっち上げました。
これじゃ現実世界の機種には対応できないと思うかもしれません。
でも心配ありません。
これから説明する内容は、設定が6段階になろうとも、確率の分母が3ケタ4ケタになろうとも、設定推測要素が複数になろうとも通用します。
なので、まずは単純化された例で基本をおさえていきましょう。
さて、この機種の設定推測を行うには、なにが必要かわかりますか?
必要なものは2つしかありません。
一つは台のスペックです。この機種の場合、設定LOWと設定HIGHのボーナス確率です。
もう一つは実戦データです。といっても総ゲーム数とボーナス当選回数だけです。
では僕がこの台を実戦して、3ゲーム打ってボーナスが2回当たったとしましょう。
この時点ではどちらの設定の可能性が高いと思いますか?
当然HIGHでしょ?
と思われた方。
正解です
スペック的には設定LOWで1/4、設定HIGHで1/2.5
難しい計算をしなくても、
「3回試行したら、設定LOWなら0回か1回の当たり、設定HIGHなら1回から2回は当たりそうだよね」
と感覚的にわかるでしょう。
また、3回の試行で2回当たりということは1/1.5の確率です。
この数値も設定HIGHの数値よりもいいので、当然設定HIGHの期待度が高いとわかります。
今回の場合、単純すぎるスペックなため感覚的にこのように判断できました。
じつは、設定推測もこれと同じで単純な考え方です。
ただ、感覚ではなく計算によって数値化しています。
手で計算してみる
ではここからが本題です。
先ほどの例を実際に計算して数値化してみましょう。
どうやって計算するのかというと、
「総当たり」
です。
二項分布とか聞くと難しそうな魔法の言葉のようですが、やっていることは総当たりです。
これなら僕でもできます。
さっそくやってみましょう。
まずは3回の試行で起こりうるすべてのパターンを洗い出します。
今回は3回の試行で結果は当たりかハズレの2パターンしかないので、2 x 2 x 2で8パターンだけです。
3Gで起こりうる全パターン
1G | 2G | 3G | 合計 |
✖ | ✖ | ✖ | 0 |
✖ | ✖ | ◯ | 1 |
✖ | ◯ | ✖ | 1 |
✖ | ◯ | ◯ | 2 |
◯ | ✖ | ✖ | 1 |
◯ | ✖ | ◯ | 2 |
◯ | ◯ | ✖ | 2 |
◯ | ◯ | ◯ | 3 |
とりあえず今はすべてのパターンを列挙するだけです。計算はこのあとからです。
では次は、設定LOWと設定HIGHの各設定において各パターンごとの確率を計算します。
設定LOWの場合、当たり確率は25%でハズレ確率は75%なので下のようになります。
設定LOW - 各パターンの確率
1G | 2G | 3G | この結果になる確率 |
✖ | ✖ | ✖ | 0.75 x 0.75 x 0.75 = 0.421875 |
✖ | ✖ | ◯ | 0.75 x 0.75 x 0.25 = 0.140625 |
✖ | ◯ | ✖ | 0.75 x 0.25 x 0.75 = 0.140625 |
✖ | ◯ | ◯ | 0.75 x 0.25 x 0.25 = 0.046875 |
◯ | ✖ | ✖ | 0.25 x 0.75 x 0.75 = 0.140625 |
◯ | ✖ | ◯ | 0.25 x 0.75 x 0.25 = 0.046875 |
◯ | ◯ | ✖ | 0.25 x 0.25 x 0.75 = 0.046875 |
◯ | ◯ | ◯ | 0.25 x 0.25 x 0.25 = 0.015625 |
ちなみに、上の表の右の列の値を合計すると1になります。
この状態では、すべてのパターンが分けられたまま別の事象として扱われています。
たとえば、「1回目に当たって2回目3回目はハズレ」というパターンと「1回目2回目はハズレで3回目に当たり」というパターンは、結果的にはどちらも1回の当たりです。
途中の展開がどうであれ、結果的にはボーナス1回なので、当たり回数ごとにこれらをまとめてしまいましょう。
設定LOW - 当たり回数ごとの確率
当たり回数 | 確率 |
0 | 42.1875% |
1 | 42.1875% |
2 | 14.0625% |
3 | 1.5625% |
これが設定LOWを3G打ったときの大当たり回数の分布です。
1回も当たりを引けない可能性は42%、逆に3回とも当たりを引く可能性は1.5%となります。
次は設定HIGHにおいても同じことをしましょう。単に確率を変えて計算するだけです。難しいことはありません。
設定HIGHの場合、当たり確率は40%でハズレ確率は60%になります。
設定HIGH - 各パターンの確率
1G | 2G | 3G | この結果になる確率 |
✖ | ✖ | ✖ | 0.6 x 0.6 x 0.6 = 0.216 |
✖ | ✖ | ◯ | 0.6 x 0.6 x 0.4 = 0.144 |
✖ | ◯ | ✖ | 0.6 x 0.4 x 0.6 = 0.144 |
✖ | ◯ | ◯ | 0.6 x 0.4 x 0.4 = 0.096 |
◯ | ✖ | ✖ | 0.4 x 0.6 x 0.6 = 0.144 |
◯ | ✖ | ◯ | 0.4 x 0.6 x 0.4 = 0.096 |
◯ | ◯ | ✖ | 0.4 x 0.4 x 0.6 = 0.096 |
◯ | ◯ | ◯ | 0.4 x 0.4 x 0.4 = 0.064 |
大当たりの確率を変えただけで、やっていることは設定LOWの計算と同じです。
これもボーナス回数ごとにまとめましょう。
設定HIGH - 当たり回数ごとの確率
当たり回数 | 確率 |
0 | 21.6% |
1 | 43.2% |
2 | 28.8% |
3 | 6.4% |
ここも大丈夫ですね。
せっかくですから、当たり回数別の確率を設定LOWとHIGHを並べてみましよう。
当たり回数 | 設定LOW | 設定HIGH |
0 | 41.1875% | 21.6% |
1 | 42.1875% | 43.2% |
2 | 14.0625% | 28.8% |
3 | 1.5625% | 6.4% |
なんか設定差が目に見えてきましたね。
ここで、最初の問題にもどり
「3Gで2回ボーナスに当たった」
というシナリオを考えてみましょう。
ボーナスが2回当たる確率は、設定LOWなら14.0625%、設定HIGHなら28.8%となります。
単純に数値が倍なので、「設定HIGHの方が倍の確率で起こりやすい」と言えます。
これを比率で計算してみましょう。
14.0625 : 28.8 = 32.8% : 67.2%
となります。
計算は以上です。
これをグラフにすると
[barChart width="500px" vaxis="{title: '設定', titleTextStyle: {color: 'blue'}}" haxis="{title: '期待度', maxValue: 1, format: '#%', titleTextStyle: {color: 'blue'}}"] ['設定', '期待度'], ['LOW', 0.328], ['HIGH', 0.672], [/barChart]
しょぼいですが、少し推測ツールっぽくなりましたね。
実際は手で計算するのは不可能
上で紹介した計算方法ですが、ツールもこれと同じことをやっているだけなのです。
違うのは、
- 現実のスロット台には複数の設定推測要素があること
- 設定が6段階あること
- 試行回数が3回などではなく数千回単位になること
くらいのものです。
しかし設定差のある要素が6つも7つもあり、設定も6段階もあり、試行回数が数千Gにもなると、計算の量は膨大になりもはや人間の手には負えるものではありません。
コンピュータはこの手の計算は大の得意です。人間が1日かかるような計算でも一瞬で計算してくれます。
エクセルでやってみる
ここでは、エクセルを使って先ほど求めた数値を計算してみたいと思います。
やり方はとても簡単です。
だまっていましたが、先ほど一生懸命計算した数値はエクセルの二項分布の関数を使って一発で計算できるのです。
エクセルを開いたら、適当なセルに
=BINOM.DIST(2, 3, 1/4, FALSE)
と入力してみてください。
すると、
0.140625
と表示されるでしょう。
実はこの数字、さっき求めた設定LOWの数字と同じなんです。
ちょっと上に戻ってみてみてください。0.140625って全く同じでしょう。
では今度は設定HIGHもやりましょう
別のセルに
=BINOM.DIST(2, 3, 1/2.5, FALSE)
と入力してみてください。
すると、
0.288
と表示されるでしょう。
つまりこのBINOM.DISTという関数、さっき僕たちがやった総当たりの洗い出しとパターンの分類と期待度の計算をまとめてやってくれるスグレモノなのです。
ついでに、各設定ごとの期待度をパーセンに換算してみましょう。
A | B | |
1 | =BINOM.DIST(2, 3, 1/4, FALSE) | =A1/(A$1+A$2) |
2 | =BINOM.DIST(2, 3, 1/2.5, FALSE) | =A2/(A$1+A$2) |
こんな感じで入力すると
A | B | |
1 | 0.140625 | 32.81% |
2 | 0.288 | 67.19% |
となりました。
さきほど手計算した結果と同じですね!
ついでに、僕が普段使っている設定推測アプリでも試してみます。
ちなみにこのツールはiスロットカウンターProというものです。購入のきっかけは、無料版と有料版を間違えてポチってしまったためなのですが、結果的に気に入りました。ただ、まだ細かい問題が残っているのにアプリの更新がストップしてしまったのが残念・・・他にオススメがあれば知りたいです。
これも同じ結果を返しました!
よっしゃ!
BINOM.DISTの使い方
どうです、BINOM.DIST先生すごくないですか?
ここでちょっとこの関数について説明しておきましょう。
まず名前ですが、二項分布のことを英語でBinomial Distributionというのでそれの略ですね。
この関数には4つの引数を渡します。
BINOM.DIST(当たり回数, 試行回数, 確率, 累積か否か)
当たり回数と試行回数については、特に問題ないでしょう。
確率ですが、「268」とか確率の分母を渡すのは間違いです。「1/268」という感じで書きましょう。
最後の「累積か否か」ですが、これに関しては「FALSE」と入力します。
二項分布は、確率質量関数か累積分布関数のいずれかを返すのですが、累積分布関数を求めたければTRUEを、確率質量関数を求めたければFALSEを入力します。
え、訳がわからないですか?
大丈夫です。僕もわかっていません。
わかっていなくても設定推測の計算はできますので、今回の計算に必要なのは確率質量関数だと覚えておきましょう。
二項分布自体は、一般的な統計用の計算なので、Excel以外の表計算ソフトでもたいていついているはずです。たとえば、Google Sheetなら「BINOMDIST」(ドットなし)という関数名で利用できます。
応用してみる
以上で、設定推測ツールの計算方法についてはだいたい解説いたしました。
先ほどの例をベースにして
- 設定を6段階分に増やして
- 設定推測要素を複数にすれば
- グラフをつければ
世に出回っている推測ツールと同じものが作れるようになります。
設定推測要素を複数にした場合は、全要素の確率質量関数(BINOM.DIST関数の結果)を先にかけあわせてから比重を求めるのがポイントです。
こういったものを作っておくと、たとえばデータ取りしたデータをエクセルで管理しているような時、ホールのデータから一気に設定推測の結果まで表示させることができるようになります。
また、エクセルでなくても同じことはできます。
プログラムができる人なら自作ツールを公開とかもできます。
僕は、ジャグラー用のツールを自作しました。
収集したデータ(回転数、ボーナス、差枚数)からブドウ確率を推計して、ブドウの個数を求め、それも含めて設定推測を行うというツールです。
データの入力から自動化しているので、全自動で全台の設定推測をして結果をメールで送信なんて使い方まであったりします。
とはいえ自作ツールというのはあくまで参考程度というか、こんな使い方もできるよという感じですね。
ただここまでやるかは別にしても、スロットってやっぱり確率ゲーなので、設定推測の根底にある考え方を理解しておくことはけっこう役にたつかなと思います。
僕は、自分のツールなんかよりもやっぱりアプリを使いますし、スロマガも使っています。
スロマガは有料ですが、設定推測ツールだけでもかなり充実しています。
ジャグラー・ハナハナだけでもいろんなツールがあります。
たとえば、異なる機種の複数の台のデータを入力して、一括で設定推測してくれてどれを打ったほうがいいかを教えてくれるツールとかがあります。
まあ、ここで説明した方法を使えば、同じものは作れるんですが、けっこう面倒ですよね。
あと、エクセルとかで作っちゃうと、PCならそれでもいいと思うのですが、外にいる時ってスマホだし、その場合エクセル自体は使えますがお世辞にも使いやすいとはいえません。
スロマガのツールはスマホ向けに作ってあるし、新機種の解析とかも早く出るので結局これを使うのが無難だったりします。